
ぶどう作りには、外から見るだけでは分かりにくい細かな作業がたくさんあります。
その中でも、大粒ぶどうの品質を大きく左右する大切な作業が「摘粒(てきりゅう)」です。
5月頃から6月頃今の時期は、大粒ぶどうの摘粒作業に追われています。
摘粒とは、ぶどうの粒を一粒ずつ間引き、房の形を整えながら、残した粒を大きく美しく育てるための作業です。1房の1粒ずつハサミで粒を切り落としていくので、1房あたりとても時間が掛かります。
シャインマスカットや雄宝、ほほえみなどの大粒ぶどうでは、この摘粒の仕方によって、仕上がりの美しさや食べやすさが大きく変わります。
今回は、いぬいぶどう園で実際に行っている摘粒作業の様子をもとに、
「摘粒とは何か」
「なぜ必要なのか」
「摘粒前と摘粒後でどう変わるのか」
を紹介させていただきます。
目次
摘粒(てきりゅう)とは?ぶどう栽培で欠かせない重要作業
摘粒とは「粒を間引く作業」のこと
摘粒とは、ぶどうの房についている粒を、必要な数だけ残して間引いていく作業です。
まだ粒が小さい時期に、房全体の形や粒のつき方を見ながら、一粒ずつ丁寧に整理していきます。
ぶどうは自然に任せていると、粒が多くつきすぎたり、房の中で粒同士が混み合ったりします。
そのまま育つと、粒が大きくなりにくくなったり、房の形が乱れたりすることがあります。
そこで摘粒を行い、残す粒と取る粒を見極めながら、ぶどうが美しく育つためのスペースを作っていきます。
なぜ摘粒をするの?|大粒・高品質なぶどうを育てるため
摘粒の大きな目的は、ぶどうの粒を大きく、形よく、美味しく育てることです。
粒の数が多すぎると、一本の房に栄養が分散してしまいます。
その結果、一粒一粒が小さくなったり、粒の大きさにばらつきが出たりします。
摘粒によって粒の数を調整することで、残した粒に栄養が届きやすくなり、大粒ぶどうらしい食べ応えのある房に育ちやすくなります。
摘粒をしないとどうなる?|粒が小さい・形が乱れる原因に
摘粒をしないまま育てると、房の中で粒がぎゅうぎゅうに詰まってしまうことがあります。
粒同士が密集すると、成長するスペースが足りなくなり、形が押し合って変形したり、房全体が窮屈な印象になったりします。
また、風通しが悪くなることで、湿気がこもりやすくなる場合もあります。
特に大粒ぶどうでは、一粒の存在感が大きいため、摘粒の良し悪しが仕上がりに出やすいです。
見た目の美しさだけでなく、食べやすさや品質にも関わるため、とても重要な作業になります。
摘粒はいつ行う?|ぶどう農家のタイミング管理
粒が小さい時期に行う理由
摘粒は、ぶどうの粒がまだ小さい時期に行います。
粒が大きくなってからでは、房の形を整えにくくなり、作業もしづらくなります。
小さいうちに不要な粒を間引いておくことで、その後の成長に必要なスペースを確保できます。
ぶどうが大きくなる前に、未来の房の形を想像しながら整えていく作業です。
デラウェアとシャインマスカットでは作業内容が違う
ぶどうといっても、品種によって作業内容は大きく変わります。
デラウェアのような小粒のぶどうと、シャインマスカットや雄宝のような大粒ぶどうでは、房の作り方も管理の仕方も違います。
大粒ぶどうの場合は、一粒一粒が大きく育つため、最終的にどの粒を残すかがとても重要です。
房全体のバランスを見ながら、完成形を考えて摘粒していきます。
天候や生育状況によって調整が必要
摘粒は、カレンダー通りに機械的に進められる作業ではありません。
その年の気温、雨の量、日照時間、ぶどうの成長スピードによって、作業のタイミングは少しずつ変わります。
2026年は、いぬいぶどう園では少し生育がゆっくりめの印象があります。
そのため、ぶどうの状態を見ながら、無理に急がず、一房ずつ確認して作業を進めています。
摘粒のビフォーアフター|実際にどう変わる?

摘粒前|粒が多く、栄養が分散しやすい状態
摘粒前のぶどうは、粒がたくさんついています。
一見すると「たくさん実があって良い状態」に見えるかもしれません。
しかし、大粒ぶどうの場合、粒が多すぎると一粒一粒に十分なスペースがなくなります。
栄養も分散しやすく、粒の大きさにばらつきが出やすくなります。
そのため、収穫時に美しい房に仕上げるためには、あえて粒を減らす必要があります。
摘粒後|粒数を減らして一粒ずつ大きく育てる
摘粒後は、房全体がすっきりとした印象になります。
粒を間引くことで、残した粒が大きくなるための空間ができます。
この段階では少し寂しく見えることもありますが、ここから時間をかけて一粒一粒が大きく成長していきます。
ぶどう作りでは、今の見た目だけではなく、数週間後、収穫時の姿を想像しながら作業することが大切です。
見た目だけじゃない|味・食感・糖度にも影響する
摘粒は、房の見た目を整えるだけの作業ではありません。
粒数を調整することで、残した粒に栄養が届きやすくなります。
その結果、大粒ぶどうらしい果肉感や、しっかりとした甘みにつながっていきます。
もちろん、ぶどうの味は天候や土壌、葉の状態、水分管理など、さまざまな要素で決まります。
その中でも摘粒は、品質を高めるための大切な作業の一つです。
シャインマスカットや雄宝は特に摘粒が重要
大粒品種ほど「どこを残すか」が難しい
シャインマスカット、雄宝、ほほえみなどの大粒品種では、摘粒の判断がとても重要になります。
粒が大きくなるぶん、残しすぎると房が詰まりすぎてしまいます。
反対に取りすぎると、房のボリュームが足りなくなることもあります。
そのため、どの粒を残し、どの粒を取るかを見極める力が必要です。
房の形を見ながら一粒ずつ判断していく
摘粒では、単に数を減らせば良いわけではありません。
上から見た形、横から見たバランス、粒と粒の間隔、軸の伸び方などを見ながら、一房ずつ調整します。
同じ品種でも、房ごとに形は違います。
そのため、すべて同じやり方ではなく、その房に合わせて手を入れていく必要があります。
摘粒で最終的な品質が大きく変わる
大粒ぶどうは、見た目の美しさも大切です。
贈答用として選ばれることも多く、房の形や粒の揃い方は、ぶどうの印象を大きく左右します。
美味しさはもちろん、手に取った時に「きれいだな」と感じてもらえる房に育てるためにも、摘粒は欠かせない作業です。
摘粒は想像以上に時間がかかる作業
一房ずつ確認しながら丁寧に進める
摘粒は、とても時間のかかる作業です。
ぶどうの房を一つずつ確認しながら、残す粒と取る粒を判断していきます。
一房だけなら短時間で終わるように見えても、畑全体となると膨大な作業量になります。
特に大粒ぶどうは、一房ごとの仕上がりが大切なので、スピードだけでは進められません。
ぶどう農家の夏前は摘粒との戦い
ぶどう農家にとって、初夏から夏前にかけてはとても忙しい時期です。
摘粒だけでなく、葉の整理、草の管理、病害虫の確認、袋掛けの準備など、同時進行でたくさんの作業があります。
この時期の手入れが、夏のぶどうの品質につながっていくため、毎日畑を見ながら作業を進めています。
見えない部分に手間と時間が詰まっている
直売所に並ぶぶどうを見ると、完成したきれいな房だけが目に入ります。
しかし、その一房ができるまでには、冬の剪定から始まり、春の芽吹き、花穂整形、摘粒、袋掛けなど、たくさんの工程があります。
摘粒はその中でも、ぶどうの仕上がりを大きく左右する、まさに見えない職人仕事のような作業です。

いぬいぶどう園のこだわり
除草剤・殺虫剤に頼らず葉や風通しを管理
いぬいぶどう園では、除草剤や殺虫剤を使用せず、ぶどうの葉の整理や雑草管理を行いながら、畑全体のバランスを見ています。
自然に近い環境では、作業量も増えます。
草の伸び方、虫の動き、葉の混み具合、風通しなど、毎日観察しながら管理する必要があります。
摘粒も、そのような日々の管理の一部です。
自然とのバランスを見ながら育てるぶどう
ぶどう作りは、自然環境が影響します。雨が多い年、暑さが強い年、虫が増える年、成長が早い年、遅い年。
毎年まったく同じ条件になることはありません。
だからこそ、その年のぶどうの状態をよく見て、必要な作業を積み重ねることを大切にしています。
「見た目だけではない美味しさ」を目指して
いぬいぶどう園では、房の見た目だけでなく、食べた時にしっかり美味しいと感じていただけるぶどう作りを目指しています。
摘粒は、ただ形を整えるためだけではなく、残した一粒一粒を大切に育てるための作業です。
直売所で手に取ってくださる方に、今年も「美味しい」と感じていただけるよう、一房ずつ丁寧に向き合っています。
摘粒だけではない|ぶどう作りは一年を通した積み重ね
冬の剪定から始まるぶどう作り
ぶどう作りは、収穫の時期だけが大切なのではありません。
冬の剪定で枝を整え、春に芽が出て、花が咲き、実がつき、そこから房を整えていきます。
摘粒は、そうした一年の流れの中にある大切な作業です。
花穂整形・摘粒・袋掛けへ続く細かな作業
ぶどうの房は、自然にできたものをそのまま収穫しているわけではありません。
花が咲く前後には花穂整形を行い、実がついてから摘粒を行い、その後、袋掛けなどの作業へ進んでいきます。
一つひとつの作業が積み重なって、ようやく直売所に並ぶぶどうになります。
自然相手だからこそ毎年違う難しさがある
農業は、毎年同じように見えて、実際には毎年違います。
2026年は少し生育がゆっくりめの印象があり、梅雨時期の病気や、カメムシなどの害虫にも注意が必要です。
不安なこともありますが、毎日ぶどうの状態を見ながら、できることを一つずつ進めています。
2026年のぶどうも少しずつ成長しています
現在はシャインマスカットや雄宝の摘粒が進行中
現在、いぬいぶどう園では、シャインマスカットや雄宝、ほほえみなどの大粒ぶどうの摘粒作業が少しずつ始まっています。
まだ青く小さな粒ですが、これから時間をかけて大きく育っていきます。
摘粒前と摘粒後の様子を見ると、かなり印象が変わります。
粒を減らすことで、一房一房がこれから大きく育つための準備が整っていきます。
今年は少し生育がゆっくりめの印象
2026年は、例年と比べると少し育ちがゆっくりめに感じています。
そのため、販売開始時期や品種ごとの登場時期については、ぶどうの状態を見ながら判断していく予定です。
まずはデラウェアから販売が始まり、その後、大粒ぶどうが順番に登場していく流れになる見込みです。
病害虫や梅雨を乗り越えて美味しく育ってほしい
これから梅雨時期に入ると、湿度が高くなり、ぶどうにとっては病気に注意が必要な季節になります。
また、今年はカメムシが多い年とも言われており、畑の様子を見ながら注意深く管理しています。
このまま大きな問題なく、無事に美味しいぶどうへ育ってくれることを願っています。
摘粒は「未来の一粒」を育てる作業
ぶどうの美味しさは見えない手間で作られている
摘粒は、収穫されたぶどうだけを見ていると、なかなか気づかれにくい作業です。
しかし、美しい房や大きな粒を育てるためには欠かせない、とても大切な工程です。
粒を減らすという作業は、一見もったいないようにも見えます。
けれど、その選択が、残した粒をより良く育てることにつながります。
直売所で見る一房の裏側
直売所に並ぶ一房のぶどうには、たくさんの手間と時間が詰まっています。
摘粒、葉の整理、草の管理、袋掛け、収穫。
そのすべてがつながって、ようやくお客様のもとへ届きます。
今年ぶどうを手に取っていただく時には、そんな畑での作業も少し思い出していただけると嬉しいです。
今年も美味しい柏原ぶどうを届けられるように
いぬいぶどう園では、今年も柏原ぶどうを楽しみにしてくださる方へ、美味しいぶどうをお届けできるよう作業を進めています。
まずはデラウェアからシーズンが始まり、その後、大粒ぶどうも少しずつ登場していく予定です。
また販売時期や生育状況については、HPやSNSで改めてお知らせしていきます。
よくある質問(FAQ)
摘粒はいつ頃行うのですか?
摘粒は、ぶどうの粒がまだ小さい時期に行います。5月中旬頃から6月中旬頃まで作業を行っています。
品種やその年の生育状況によって時期は変わりますが、大粒ぶどうでは、粒が大きくなる前の大切な時期に作業を進めます。
摘粒すると甘くなるのですか?
摘粒だけで甘さが決まるわけではありませんが、粒数を調整することで、残した粒に栄養が届きやすくなります。
糖度や食味には、天候、葉の状態、水分管理なども関わりますが、摘粒は品質を高めるための重要な作業です。
摘粒は手作業ですか?
はい。摘粒は基本的に手作業で行います。
房の形や粒の付き方は一つずつ違うため、機械的に同じように処理することは難しく、一房ずつ確認しながら進めます。
デラウェアも摘粒するのですか?
デラウェアとシャインマスカットのような大粒ぶどうでは、管理方法が異なります。
品種によって必要な作業や目的が違うため、それぞれのぶどうに合わせた管理を行っています。
摘粒しないぶどうとの違いはありますか?
摘粒を行うことで、粒の大きさや房の形を整えやすくなります。
特に大粒ぶどうでは、摘粒をすることで食べやすく、美しい房に仕上がりやすくなります。












